まだ子猫と思いたいけど

雨が降ってるせいで部屋がなまら寒い。
猫のために買ったといいつつ飼い主も使っている、ニトリの冬をぬくぬく過ごせるグッズはかなりの争奪戦で、今日はダメだった。

勝ち誇った猫たちが「俺らのもんだ」と占領している。恨めしくその姿を見つめるが、足を入れることもままならず(入口を塞いで寝転がっているので)部屋の片隅でガタガタ震えるしかない。

今日もアレンは疑似交尾でビビの上に乗っている。
ビビは、アレンが寝込みだろうと主人に甘え中だろうとただの通りすがりだろうと、突然襲われたとして黙ってそれを受け入れている。
しかし、翻ってビビがムラムラきてアレンの上に乗りたいと思ってもアレンは全力で抵抗して許してくれない。徹底的に抵抗して逃げ回り、気持ちの収まらないビビは、ずっと「なおんなおん」している状態だ。可哀想に。

それにしても猫の成長は早い。
アレンとビビは保護された猫で、救出されたのは生後一ヶ月の時だった。
多頭飼いで去勢していないため猫が次々生まれるものの飼い主が子猫に興味がなく、放置されてやがて死ぬ……という家に産み落とされた猫だ。
縁あって我が家に来たときは2カ月。ファーストコンタクトよりずっと大きくなっていたが、それでもまだちゃんとした子猫だった。

ところが最近ではどうだ。
すっかり成熟して「なおんなおん」して疑似交尾、「もっとうまい餌をよこせ」とキッチンをウロウロしている。
あんまりやらないけどたまにやる『おやつ』が欲しくてたまらないのか、
「この辺りにあるはずなんだよな」とやたらくんくんしまくっている。
ここで可哀想などと情け心を出したら、「こいつは請えばくれる」と思われてしまうので心を鬼にして見守る戦法をとることにした。
成長してきたとはいえまだ子猫。棚の上に乗るほどの脚力はなく、冷蔵庫の上にそれがあるなどとは知る由もない。

と、高を括って過ごしていたが、とある日のこと。
我々は親子でゲーム配信をしていた。
いつものごとく下手くそフォートナイトを、身内しか見ないのに配信していたのだが、なにやら背後でガサゴソと音がする。と、突如夫が「うわー!」と叫んで騒ぎ出した。
「なになになに」
「上に乗ってる!」
「誰が? どこに?」
「アレンが! 冷蔵庫に!」

報告を受けて冷蔵庫の上を見ると、たしかにアレンがよじ登り、冷蔵庫の上でおやつ箱を漁っている姿が目に入った。
コントローラーを放り出して駆け寄りたいところだったが、いかんせん配信中であるためブレーキがかかる。
なにせ三人で配信しているが、視聴者が見ているのは私の画面だからだ。突如止まったら何事かと思うことだろう(すでにそれまでのやり取りで察知はできると思うが……)。

ということで、ゲームしつつ背後に気を配っていたわけだが、当然集中できるはずもなくあっさり負けた。
で、よじ登ったアレンは夫により御用となったわけだが、そこに潜ませておいたまたたびを塗れさせたぬいぐるみに気がつき、目の色を変えて咥えている。

いや、またたびはまだあげるつもりはないの。
引きはがそうとしたら歯と爪でがっちり捉えているので離れず、釣りみたいに猫ごと一緒に持ち上がる。
おやつより夢中になるものを見つけてしまったみたいだ。それにしてもまたたびの威力すごいな。
クレーンゲームみたいにぶらーんとぶら下がりながらぬいぐるみを舐めるアレンを見て、その、離すまいと必死の形相で捕まっている姿は可愛らしいというにはほど遠く、いよいよ子猫卒業だな……と寂しく思うのだった。

※こちらは2021.11.4にnoteにて『まだ子猫と思いたいけど』のタイトルで投稿したものの再掲です

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2021年7月に保護された雄の兄弟猫を迎えました。
名前はアレンとビビ。
二匹の成長と、猫との暮らしを綴ります。

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