生後5ヶ月で発情気味のニャンたち

飼い猫が膝の上で寝ている。この上ない至福だ。

秋晴れの気持ちいい十月、朝一番で動物病院に行ってきた。
生後五カ月を迎えた子猫ズが最近発情気味で、お互いの上に乗りたがり、嫌がられて喧嘩になる日々が続いているからだ。

はしたない話だが、上に乗ろうとしている猫の足をひょいと持ち上げたらちゃんと性器が露出していた。
そもそも成熟の早い個体だったのだろう。
二カ月で迎えた保護猫だが、三カ月を過ぎる頃には同様の仕草が見られた。

可愛い顔して疑似交尾をする様は、「アニマルですな」という感じ。

そんなアニマルシャムミックスズは去勢するには月齢が幼く、身体が育っていないということで時が経つのを待つしかない。
そうこうする内にマーキングで家具やら壁やらにおしっこを引っ掛けたり、雌猫を求めて脱走するんじゃないかと気が気じゃなかった。

そして最近、小さな歯があちこちにポロポロ落ちだして、いよいよもって疑似交尾をけしかける様が激しくなり、甘ったるい鳴き声を朝に晩にとあげるようになってきたので、もう去勢するしかない。

……ということで満を持して病院へ駆け込むことにしたのだ。

かかりつけの病院は、以前飼っていた猫が亡くなるまでお世話になっていたところである。
あれから数年経っていて、似ても似つかない幼い猫を連れて行ったのに、乗り付けた車で「かぶとくん(前猫)の……」と気づいてくれた接客業の鏡みたいな受付をしてくれるクリニックだ。

多分、担当する先生は犬派だと思うがそんなことは関係ない。

すっかり大きくなって満ち満ちになってしまったキャリーに入る子猫ズに優しく語り掛け、乳歯も生え変わり、体重も十分になったことを確認して、「いい頃合いでしょう」と優しく笑った。

去勢前の血液検査のため、人生で初めての注射器を向けられ絶望に打ちひしがれる子猫ズは、気を逸らすためにチャオチュールを与えられた。

普段は二匹で一本のそれを、自分だけで食べきれる幸せを感じて……かどうかは知らないが、気を緩めれば恐怖心や痛みに襲われてしまうので、ただ無心になって食を貪っているように見えた。
必死になって舐める……というより怒りに任せて噛みついて、異物感と痛みとを乗り越えようと頑張っているみたいだった。

二人の助手に手足を抑えられて、先生が血を吸いあげる間、私の役割は頭を撫でながらチュールを与えることだけ。
普段チュールをくれる人がいつものようにチュールをくれる……とは到底思えるはずもなく、「痛いことしやがってこの野郎!」と恨まれるんじゃないかと冷や冷やした。

 そんなこんなですっかり疲れ果てた子猫ズは、だから家にかえってすっかり安心して眠っている。

「我が家はいいにゃあ」
 と、ぐうぐういびきをかいている。

膝で落ち着いてくれるのを見て、恨まれはしなかったと安堵した。

子猫は可愛い。子じゃなくても猫は可愛い。
可愛い猫が膝に乗ってて幸せすぎる。

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