町の小さな本屋に、村上春樹が山積み

村上春樹の新作が出たことをネットニュースで知った。
”6年ぶりの長編に長蛇の列”という見出しだ。

そうか、長蛇の列か。
別に早かろうと遅かろうと、手に入れば同じことなのに、行きつけの本屋には「もうないのかもしれない」と思うと出遅れたことが少し悔やまれる。

(先に言っておくがこの記事に猫の話はない)

同じニュースのコメントで(私はネットのコメント欄を見るのが趣味だ。悪趣味だとは知っているけれどもう十数年もチェックし続けているのだから癖のようなものだ)、「ハルキスト(※村上春樹の熱狂的なファンのこと)は村上春樹の本の内容などどうでもよくて、本を一番に買い求めて”最初に読んだ”ということを自慢したいだけ」と書いてある(正確ではない。そんな感じのことを)のを見た。

まぁたしかに。私はハルキストというほど熱狂的かどうかはわからないけれど、村上春樹は読み続けているし、出版されれば買う。インタビュー記事も目に留まれば読むし、かといって四六時中追っかけているわけではない。だからハルキストってほどではないと自覚はしているけれど、だからといってハルキストがたとえそんな思いでいたって別に構わないじゃないかと思う(でもきっとコメントを書いた人の独断と偏見だと思うが)。ハルキストではないと自覚している私でさえ、「早く読みたい」と思うのだし、ファンであれば誰より早く手に入れたいものではないのだろうか。

などと思いながら、とはいえ万が一にもあるかもしれないので、書店に車を走らせたらあった。
あっさり書き過ぎたので「ん?」となったかもしれないのでもう一度書くが、「あった」。

あった

なんなら平台に山積みだった。町の小さな本屋だ。ひと昔前は閑古鳥が鳴いていたが、数年前(もう十年ほどになるかもしれない)から始めたスタンプカードで起死回生をはかった不屈の本屋だ。店員は大抵無愛想で半年から一年ほどで入れ替わる、そんな本屋だ。検索機を導入したがすぐに故障し、今となってはカバーがかかったままの本屋だ。数年前のものでも売れそうであれば新作風にみせかけて平台に置き続け、なぜかタレント本を厚遇する謎の本屋だ。

心の中では「もしかしたら」と思っていた。この本屋であれば、もしかしたら。
そのもしかしたらが当たり、自動ドアを入ってすぐに、筆書きでの大書が目に入った。

『村上春樹の最新作!大量入荷!!』

平日の昼間、新作ブロックに人気はなかった。町の小さな本屋に、村上春樹が山積みされている。

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