【号泣!】Amazonプライムビデオで『少年の君』を観て深夜2時に三度泣く。これはまごうことなき純愛の物語だ。

目次

映画『少年の君』

ネタバレ無しレビュー

深夜に見るんじゃなかったと後悔

その日は春に大学生となる娘が、卒業旅行として友達と二人で韓国に行くという前日だった。ひとりで用意するのは不安だからと一緒に起きていて、もう深夜零時を回ってはいたけれど、時間潰しに「次に観る映画でも探そうか」とプライム作品を流し見していた

いくつかの作品をウオッチリストにぶち込んで(こうしてウオッチリストの量が尋常な物ではなくなっていく)、ああ眠い、とあくびをしかけた時だった。

予告映像より

正直、ジャケ写だけなら気に留めなかったし、タイトルでさえまったく心惹かれる要素が見当たらない。だというのにこの作品をチェックしたのは、『世界が称賛』と『アカデミー賞』の文字に加え、充足した星によるものだといえる。

プライムビデオの説明書きはこうだ。

進学校に通う成績優秀な高校3年生のチェン・ニェン。全国統一大学入試を控え殺伐とする校内で、ひたすら参考書に向かい息を潜め卒業までの日々をやり過ごしていた。ある日、下校途中の彼女は集団暴行を受けている少年を目撃し、とっさの判断で彼シャオベイを窮地から救う。辛く孤独な日々を送る優等生の少女と、ストリートに生きるしかなかった不良少年。二人の孤独な魂は、いつしか互いに引き合ってゆくのだが・・・。

プライムビデオ『少年の君』
予告映像より

がり勉少女と不良少年の格差恋愛か…。

まったく惹かれない。こんな題材は腐るほどあるし、もうこの歳になっては食傷気味だ。
でもしかし、充足した星の数には意味があるに違いないと、そこに羅列したコメントを読むと、どうやら主人公のがり勉少女はいじめに遭い、そこから光を見出すというストーリー展開らしい。そして何より、コメントのひとつにあった、

「いじめ」を昇華した初めての映画

という言葉に興味を覚えた。どれだけ綺麗ごとを並べても、人というのは必ず誰かを差別する。だから世界中で「いじめ」や迫害が起こるのだ。そんないじめが「昇華する」なんてことがあるのだろうか。

さわりだけ見てみよう――

そのまま『今すぐ視聴する』を押した私は、さわりと言いつつ、結局終わりまで停止を押すことが出来なかった(娘に呼ばれるせいで一時停止は何度も押す羽目になったけれど)。

まったく深夜に見るものじゃない。ましてや家族がいる時間帯に――だって私はこの映画を見て、結局三度も泣いたのだから。

さえない少女がイケメンの不良少年に出会う奇跡

この映画の印象は制服と暴力と涙

試験まで何日と書かれたボードと机に積み上げられた教科書、受験という荒波を乗り切る体力づくりのためのマラソン、そして牛乳運び。少女たちは牛乳瓶が詰まったラックを二人掛かりで運んでいく。作業でしかない事柄。無言で、ただやるべき仕事を全うするためだけの長く続く廊下。

予告映像より

学校や日常という生活を通して見えるのは貧困や差別、学歴社会にあるやるせなさや理不尽さ。娘のためにと偽物の商品で商売をする母親はなぜか底抜けに明るく、娘の苦悩を知る由もない。娘は娘で自らに起こることを(不幸せなことも幸せなことも)母親には話さず、ただひとりで健気に日々を送っていく…。

そんな折、少女はストリートで暴力に明け暮れるひとりの少年と出会う。
少年は少女にせめてもの恩義を尽くし、少女は生きていくために少年を利用する。それはただ、それだけの関係のはずだったが――

泣けるのは可哀相だからじゃない

歳を取ると涙脆くなる。出産後ほどそれが顕著となり、子供が関わるすべてのことで泣きやすくもなった。しかし子が成長するにつれ、一時的に弱った涙腺もまた固いものとなったはずだ。

だというのにこれは、三度も泣いた。
例えば誰かが死んだとか、不治の病で死にゆく姿であるとかそういうことなら泣くことはほぼない(あのタイタニックでさえ泣けなかったのだから)。
しかしこの『少年の君』では、暴力の前に涙をこらえる少年も少女の前ではハラハラと泣いて見せたり、抗いようのないいじめに静かに雫を落とす少女も、少年の前では感情を爆発させてみせる姿が、ことさらにいじましい

灰色の日常に偶然に出会った彼らだったが、いつしかお互いを必要とする存在となり、それぞれの痛みを自分のことのように感じているその想いに触れ、涙腺が決壊する。

予告映像より

ぎすぎすした世の中にあっても愛は不変

『少年の君』で描かれるのは、理不尽ないじめにさらされた少女がサバイブしていく様子であり、貧困から抜け出せない少年に降りかかるゾッとする暴力や差別。大人を信じられない子供たちを救いたいと願うも、それを叶えられずジレンマに陥る大人たち。
そんな、どうしようもない中で生きていく希望は、結局――愛。

母を悲しませたくない少女の愛
嘘にまみれた世界から救いたいと願う大人たちの愛
少女を解き放ちたいと願う少年の愛

SNSで些細なことが炎上するような世の中だけれど、でも本当のところはみんな、愛を信じている
ここに描かれるのはだれかを思いやる『不変の愛』だ。
そんな愛の物語を、ストーリーを通じて触れることが出来るだろう。

予告映像より

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ちょっとだけネタバレ感想

※ここからはネタバレを含みます

予告映像より

少年が罪を犯してまで少女を守ったと判明した瞬間、そこまでのことをしてのけるのは、道徳などの勉強をせずにストリートで暮らしてきた弊害だろうかと思った。でも、真実が明らかになることで、少年がどれほどまでに少女を大切にしているかがわかり、胸を衝いた。

そしてそんな彼らを救いたいと願う警察官の青くさい嘘は、少女の小さな胸をはっきりと揺さぶり、物語は暮れなずむハッピーエンドへと向かっていく。なんてうまい描き方だろう。少女を演じるチョウ・ドンユイの張り裂けそうな思いが画面を通じてひしひしと伝わってきて、さめざめ泣いた。少年はこのときもまだ、少女を守っているというのに――。

導入を回収したエンディングにホッと胸が温かくなった。
これほどの純愛を見ることが出来たのは、コメント欄にあった『「いじめ」を昇華した初めての映画』というフレーズ。この言葉に出会うことで良かった。私のレビューも、誰かのそんな役に立ったら嬉しいと思う。

監督と主要キャスト

監督

デレク・ツァン(曾國祥) 

香港出身の、俳優であり映画監督である人。
2001年に俳優としてデビューした後、2010年に『恋人のディスクール』(原題「戀人絮語」)で監督業に進出。
ソウルメイト/七月と安生七月與安生 Soul Mate(2016年)が話題になり、 2020年の第39回香港電影金像奨において『少年の君』で最優秀監督賞を受賞する。父親は香港映画界において観ないことはないというほどに出演作の多い俳優・エリック・ツァン(曾志偉)。
※参照:Wikipedia

主要キャスト

チョウ・ドンユイ(周冬雨)

主人公の少女チェン・ニェンを演じ、中国では『13億人の妹』の愛称で親しまれる女優。
チャン・イーモウ監督(※代表作:『紅いコーリャン』『初恋の来た道』など)の『サンザシの樹の下で』がデビュー作。

https://www.instagram.com/p/CfRBk90NzXe/?utm_source=ig_web_copy_link

同一人物とは思えないほどの大人っぽさ。こうしてみると少し冨永愛にも似てるような。

イー・ヤンチェンシー(易烊千璽)

2013年に結成された男性アイドルグループTFBOYSのメンバー。
5歳から芸能活動を始め、アイドル活動、俳優、歌手活動を行う。2018年、映画『少年の君』にて初主演を務める。


微博:Yi Yang Qianxi JacksonYee スタジオ

微博:イー・ヤンチェンシー公式アカウント

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映画情報(あらすじと補足)

映画情報

あらすじ

進学校に通う成績優秀な高校3年生のチェン・ニェン。全国統一大学入試(=高考)を控え殺伐とする校内で、ひたすら参考書に向かい息を潜め卒業までの日々をやり過ごしていた。

そんな中、同級生の女子生徒がクラスメイトのいじめを苦に、校舎から飛び降り自らの命を絶ってしまう。少女の死体に無遠慮に向けられる生徒たちのスマホのレンズ、その異様な光景に耐えきれなくなったチェン・ニェンは、遺体にそっと自分の上着をかけてやる。

しかし、そのことをきっかけに激しいいじめの矛先はチェン・ニェンへと向かうことに。彼女の学費のためと犯罪スレスレの商売に手を出している母親以外に身寄りはなく、頼る者もないチェン・ニェン。同級生たちの悪意が日増しに激しくなる中、下校途中の彼女は集団暴行を受けている少年を目撃し、とっさの判断で彼シャオベイを窮地から救う。

辛く孤独な日々を送る優等生の少女と、ストリートに生きるしかなかった不良少年。二人の孤独な魂は、いつしか互いに引き合ってゆくのだが・・・。

映画『少年と君』公式サイト

コンテンツ詳細

制作クロックワークス
配信先Amazonプライムビデオ、
監督デレク・ツァン(曾國祥) 
キャストチョウ・ドンユイ(周冬雨)
イー・ヤンチェンシー(易烊千璽)
公開日2021年7月16日
ジャンルヒューマンドラマ
視聴層制限なし

シーン別注釈

ラブシーンキスシーンあり(軽い)
露出洋服を破られるシーンはあるが直接の露出は無し
性表現なし
暴力シーンあり
殺人直接的な殺人シーンは無し
出血多少あり
補足複数人からいじめを受けるシーンあり

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