【韓国ドラマ】『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』鮮やかな復讐劇は秀逸な人間ドラマだった

目次

ドラマ『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』

映画情報はこちら

ネタバレ無しレビュー

パート1を終わってからずっと待ち続けていたパート2が始まったので、レビューしようと思う。

翌日は北海道の一番南、函館に旅行の予定だった。旅行の準備を終えて、少しだけ休もうと熱めにいれたココアとタブレットを持って、ソファーでネットフリックスを開く。

Nの赤い文字を確認したあと、いきなり飛び込んできたのは『ザ・グローリー』のサムネイルだった。

予告映像より

その日がパート2の公開日だとは知らず、忙しさが続いてどのVODアプリも開けずにいたので、たまたまネットフリックスを開いたのは(AmazonプライムでもTverでもU-nextでも良かったのに)、偶然でしかない。

パート1を見終えてからずっと、パート2が始まるのを待ちわびていたのだ。「少しだけ見よう」そう思って、再生マークをタップした。

壮絶ないじめの内容と復讐を心に誓う様を描いたパート1

パート1(前半8話)では、高校時代に壮絶ないじめを受けて人生を大きく狂わされることとなった主人公が、復讐のために生きる人間になったことが描かれた。

生きるためにお金を稼ぎ、知識をつけ、職業を手に入れる。どんな苦労をも厭わず邁進するそれは、自分を否定し、嘲り、地面を這わせた加害者たちを見返すためではなくただ――復讐のため。

あれほどまでに自分を傷つけた相手に対峙する力をどうして手に入れることが出来るだろうか。普通の人間ならきっと、加害者たちの前に出ることすら出来ないし、その名前を見ただけで、あの昼でも夜のように暗い絶望の日々に引き戻されてしまうだろう。癒しきれない大きな傷は血を垂れ流し続け、それでもなんとか蓋をして前に進んでいくことだろう。

いじめは主に学校の体育館で行われる。その場所で主人公の心は粉々に砕け、そのまま身動きが取れないまま時を重ねていくのだ。

これはドラマで現実ではない。けれど、だからこそ加害者に凛として立ち向かい、復讐の鉈を振るう様を期待を持ってみることが出来るのだと思う。

長い時間をかけて力を蓄えた主人公は立ち上がり、戦いの火ぶたを切って落とす。

わかりやすい勧善懲悪の復讐劇…ではない

予告映像より

とはいえこれは、それほどわかりやすい勧善懲悪ではない。

万能な力を手にしたスーパーヒーローが、加害者を懲らしめて単純に牢屋にぶち込まれるような展開ではないし、命をもって報いを受ける出血オンパレードの暴力劇でもない。

良心に阻まれる主人公

金持ちたちの暇つぶしの餌食になるまで、彼女自身はどこにでもいる女の子に過ぎなかった。当然その胸には『良心』があり、加害者の周囲にいる人たち――夫や子供――に傷ついて欲しくはないという呵責を生む。

良心の呵責は彼女の復讐心に陰をさし、その足を立ち止まらせる。復讐を果たす人生が、さも当然であるかのように描かれないところがこのドラマの良いところであり、感情移入出来るところでもある。

予告映像より

良心の対極に立つ加害者たち

復讐の対象となる加害者はあまりに多いが、直接手を下したことでメインとなるメンバーは5人。資産家の家に生まれた自分たちをヒエラルキーの頂点にいると位置づけ、欲のままに生きる加害者たちは、かつていじめぬいた主人公が目の前に現れても動揺すらしない。いじめた人間は数知れず、その誰をも特別ではないからだ。

加害者たちが与えた痛みを反省するよう促されても、心にとどめることなどなく、開き直りさえする。

予告映像より

与えられた機会に砂をかけて嘲笑う。そんな彼らに主人公は良心の欠片を握りつぶし、復讐への決意を新たにすることとなるのだ。

予告映像より
本格的な復讐に彩られたパート2が始まる
予告映像より

復讐の最終章が幕を開けたパート2(後半8話)は、心臓を貫く長いナイフや苦しみを与える白い錠剤を用意したりはしない。主人公である彼女はただ、加害者たちの欲望と自尊心、偶然居合わせた隣人のような疑心暗鬼を刺激するだけ。

ただそれだけで、加害者たちの人生の歯車が大きく変わっていく。

直接的に手を下すことはほぼなく、時に返り討ちに合いながら十数年の時を超えて彼らはお互いをつぶし合っていくのを、私たちは見せられていく。これまで泰然としていた加害者の面々が少しずつ血の気を失っていくのを。

予告映像より

物語を彩る多様なキャラクター

主人公や加害者を取り巻く大勢の人たちそれぞれのキャラクターが際立ち、物語に深みを与えている。どの人をとっても無駄はなく、秀逸だ。

壮大な計画が大海原であるなら、取り巻く人々は小島だ。身体的な痛みがなくとも心から血を流し続けている主人公が時に頼りにし、時に支えとなる。そんな主人公の計画を阻止し、高いハイヒールで踏みつけることが正しさと疑わない加害者の手となり足となる人々。

そんな大勢の人たちとの息をもつかせぬ攻防戦は、最後まで手綱を緩めることがなく飽きることがない。

だが綻びは必ずある。そんな綻びが大きな裂け目となったと思った瞬間、物語はあっという間に終盤を迎えていた。

終わりに

少しだけ見ようと思ったのに、再生を押す手を止められずイッキ観てしまった。人間のドロドロとした部分を描かせたら、韓国ドラマの右に出る者はいないんじゃないかと思うくらいだ。

見終わってからの感想は「面白かった」につきる。前半を見終わってから時間が経過していたので、後半を見終えてすぐに前半を見直した。暇か。
でも登場人物がまぁまぁ多い上、名前が似ていることもありよくわからなくなってしまったところが理解出来たので、結果的には良かった。

これから頭から見る人は、名前でごちゃごちゃにならないようにしておくといいと思う。…なんて、面倒くさいこときっとしないだろうから(それでもやっぱりわからなくなる)、下によく作られた相関図のリンクを貼っておこうと思う(残念ながら私が作った相関図じゃない。だからこそ良いものなんだけど)。

『ザ・グローリー』人物相関図

予告映像より

相関図はこちら>韓国ドラマ「ザ・グローリー」キャスト相関図&あらすじ|Netflix 『韓国ブログと犬』より

このブログ(ねこかま)を読むより詳しいことがわかるのでおすすめだ。

監督&脚本と主要キャスト

監督と脚本

アン ギルホ

『ウォッチャー 不正捜査官たちの真実』『青春の記録』などを演出(監督)

キム ウンスク

韓国No1ヒットメーカーと呼ばれる脚本家。手がけた作品は大ヒットドラマ『パリの恋人』に始まり、『太陽の末裔』『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜』『ミスター・サンシャイン』など多数。

主要キャスト

ソン・ヘギョ(ムン・ドンウン役)

壮絶ないじめをサバイブし、復讐を企てる主人公ムン・ドンウンを演じた韓国の女優。ドラマ『オールイン』でイ・ビョンホンと並んで主演を務め、人気女優の仲間入りを果たした。その透明感は羨むべきであるが、四十代を超えていると知り驚く。

この画像、なんて可憐なんだろう。

復讐の行きつく先はどこだろうとずっと思っていた。主人公は復讐に溺れる人生を丸ごと受け止めるのにどんな感情を抱いているのか、そんなことを考えながら。淡々と加害者を追い込んでいく氷のような主人公を演じ切り、ときに感情を爆発させるその強弱に度肝を抜かれた。

イム・ジヨン(パク・ヨンジン役)

お金持ちの非情な加害者パク・ヨンジンを演じる韓国の女優。いくつかの短編映画の後、『情愛中毒』で数々の賞にノミネートされ、人気を高める。

誰にも真似できないほどの自信と傲慢さ、したたかさを見事に演じていた。その目に宿るほの暗さや、心が折れそうになる時ですらも炎を消すまいとする底力が表現され、引き込まれた。こんなに可愛い女性だというのに、グローリーでは悪女すぎてそれは、もう。

イ・ドヒョン(チュ・ヨジョン役)

医者一家に育ち、心に傷を持つ青年医師チュ・ヨジョンを演じた韓国の俳優。主人公の青年時代を演じた『刑務所のルールブック』がデビュー作。出演作に『18アゲイン』や『5月の青春』などがある。

まだ27歳だそうだ。若いとは思っていたけれど、主人公とひと回りも違うとは。
心に傷を抱える青年の苦しさを美しい横顔に貼り付けて、悲しみがより強調されていた。

映画情報(あらすじと補足)

ザ・グローリー あらすじ

建築家になる夢を持ち、友達と陽の当たる廊下を駆け抜けるどこにでもいる高校生だった主人公は、理不尽な暴力によりそんな「当たり前」を奪われることになる。

いじめは苛烈を極め、退学を余儀なくされ、それと同時に夢は潰えた。

やがて時を駆け抜けて主人公は大人になり、教育者となって加害者の前に戻ってきた。あの暗く陰った体育館に縛り付けられた高校生の自分を解放すべく、『復讐』という幕をあけるために――。

壮絶ないじめを経験した高校時代から十数年の時を経て、綿密に練った復讐計画を実行に移し始めた女性。その目的は、自分をいたぶった者たちに、罪の代償を払わせること。

Netflix『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』

コンテンツ詳細

制作ファ&ダムピクチャーズ、スタジオドラゴン
配信先Netflix
原題(英題)더 글로리/The Glory
監督/脚本アン ギルホ/キム ウンスク
キャストソン・ヘギョ(主人公、ムン・ドンウン役)
イム・ジヨン(復讐のターゲット、パク・ヨンジン役)
イ・ドヒョン(主人公のフォロワー、チュ・ヨジョン役)
公開日パート1:2022/12/30
パート2:2023/3/10
エピソード全16話
ジャンル復讐、サスペンス
視聴層16歳以上

シーン別注釈

ラブシーンキスシーンあり(軽い)
露出洋服を破られるシーンはあるが直接の露出は無し
性表現なし
暴力シーンあり
殺人直接的な殺人シーンは無し
出血多少あり
補足複数人からいじめを受けるシーンあり

Netflixを大きい画面で見るなら”Fire TV Stick”がおすすめ。4Kに対応し、新しい第3世代なら切り替えもサクサクだ。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次